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デザイナーズマンション団地!? 福岡市のネクサスワールドを訪ねる

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団地、アパート、ハイツ、マンション。グッドルームで紹介しているいろいろなお部屋、その外観も含めて「お、これはなかなか面白いな!」ていうもの、時々めぐり合います。そう、集合住宅って、おもしろい!
世界のおもしろい建築をたくさん巡っているタケさんに、おもしろい集合住宅を紹介していただくコラムを始めます。
第1回は、福岡市のネクサスワールド。有名建築家が1棟ずつ設計したデザイナーズマンションの先駆け。さすがにおもしろい建物がそろっていますよ。
(編集部)

デザイナーズマンション団地!? 福岡市のNEXUS WORLDを訪ねる

みなさん、はじめまして。今回から始まったコラム「集合住宅っておもしろい」を担当するタケと申します。「集合住宅」とは少々堅苦しい言葉ですが、ざっくりいうとマンション、アパート、団地のように、複数の住戸にたくさんの人々が住んでいる建物のことです。このコラムではカタチや住み方、建設の経緯など、どこかが普通のマンションとは異なるユニークな集合住宅を紹介していきます。

さて、第1回に登場するのは福岡市のネクサスワールド(NEXUS WORLD)
ここは国内外の建築家6人がそれぞれ設計した集合住宅が建ち並ぶ、いわば住宅展示場の集合住宅版、あるいはデザイナーズマンション団地とでもいうべき場所です。有り体にいえば高級分譲マンション群ですが、穏当なものから先鋭的なものまで、多様なデザインの集合住宅がズラリと並んでいます。
有名建築家が集合住宅の仕事をするケースは昔からありましたが、ネクサスワールドでは各棟に建築家の名前が付けられており、建築家の存在を積極的にアピールして販売した点で、デザイナーズマンションの先駆けとなったプロジェクトでもあります。

ネクサスワールドが完成したのはバブル時代の1991(平成3)年のこと。あの当時であっても販売価格は福岡市としてはかなりの高額で、その後にバブルが弾けたこともあって、しばらくは空き家が目立ったと記憶していますが、現在はほぼ埋まっているようです。中古や賃貸の物件もたまに出ています。ただし、建築家の個性が強いだけに、住みこなしが難しい間取りが少なくありません。実際、そのことを承知の上でデザインに惚れ込んで住んでいる人が多いと聞きます。

宙に浮くスティーブン・ホール棟

スティーブン・ホール棟の正面から

スティーブン・ホール棟の正面から


窓のほとんどない壁面

窓のほとんどない閉鎖的な壁面


側面のデザインが独特

側面の窓は独特


上から見ても、横から見ても、橋桁のようなデザインです

上から見ても、横から見ても、橋桁のようなデザインです

それでは建物を詳しく見ていきましょう。6タイプ全てを紹介すると長くなりますので、特にユニークな2タイプを重点的に取り上げます。まずはこちらのスティーブン・ホール棟から。設計したスティーブン・ホール氏はアメリカの建築家です。クシの歯のように凸凹した形が目を引きますね。道路沿いの壁は南側にあたり、一般のマンションならバルコニーと掃き出し窓を設けるところですが、あえて小さな窓しか設けず、ダークグリーンに塗装された閉鎖的な壁面になっています。これは設計者曰く都市の一部となるように配慮したとのこと。しかし、横から見ると決して寡黙な建物ではないとわかります。

スティーブン・ホール棟の裏面

スティーブン・ホール棟の裏側


建物の下は空洞に

建物の下は空洞に

裏側のデザインはさらにダイナミック。建物の下は空洞が貫通していて、一部の住戸が橋桁のような形で宙に浮いています。これはもはや建築というより鉄道や高速道路の高架橋といった土木の世界ですね。しかも階段が吊り橋みたいで、ここを上り下りするのはちょっと怖そう。もちろん、内部には普通の階段やエレベーターも備わっているので、高いところが苦手な方も安心して住めます、念のため。

現代版の長屋 レム・コールハース棟

レム・コールハース棟

レム・コールハース棟


1階のガラス張りは店舗

1階のガラス張りは店舗


売り側に住戸がマス目上に並んでいます

内側に住戸がマス目上に並んでいます

次に紹介するのはレム・コールハース棟。前述のスティーブン・ホール氏も有名ですが、オランダのレム・コールハース氏は世界の建築界をリードするスター建築家でして、そんな人が設計した集合住宅に住めるというのは、建築好きにはかなり魅力的な話です。もっとも、集合住宅らしからぬこの外観から察しがつくとおり、ネクサスワールドの6タイプ中、独創的なデザインからレム・コールハース棟が一番「住み手を選ぶ」ことも確かです。

こちらも閉鎖的な黒い壁が目立ちますが、住戸の窓やバルコニーは一体どこ? 実は、この壁の内側に2~3層のメゾネット住戸がマス目状に並んでいます(1階のガラス張りは店舗)。住戸を縦に積み上げるのではなく、横に並べているのです。いわば現代版の長屋。しかも昔の長屋は住戸が一直線に連なるものでしたが、レム・コールハース棟は前後左右に並ぶという高密度ぶり。また、部屋の中が丸見えで音も筒抜けだった昔の長屋に対して、ここでは各戸に吹き抜けを設け、風や光は上から採り入れることで、プライバシーを確保しています。

現代版の長屋!?

現代版の長屋!?

ゴツゴツ

石積みを表現した外壁

かっこよくきまっています

かっこよくきまっています

ゴツゴツした外壁はコンクリートで石積みを模したもの。当初の計画ではレム・コールハース棟の背後にタワーマンションが建つ予定で、この石積み風にはタワーマンションの見かけ上の基壇という意味がありました。しかしバブル崩壊でタワーマンションは中止され、後にネクサスブランドの別の高層マンションが完成しています。意図した風景にはならなかったものの、単体でも存在感は十分。コンクリートで石積みを表現するとダサくなりがちですが、黒くすることでカッコよく決まっています。このセンスはさすがです。

そのほかの棟も魅力的。石山修武棟

そのほかの棟も魅力的。石山修武棟

マーク・マック棟

マーク・マック棟

オスカー・トゥスケ棟

オスカー・トゥスケ棟

クリスチャン・ド・ポルザンパルク棟

クリスチャン・ド・ポルザンパルク棟

連載第1回、いかがでしたでしょうか。今後、毎月1回のペースで続けていきます。どうぞお楽しみに。

今回ご紹介した建物

名称:ネクサスワールド
住所:福岡県福岡市東区香椎浜
注意:見学の際は住民のプライバシーに配慮し、住民専用エリアには入らないようにしてください。

写真と文・タケ

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